プロ漫画家になるには

漫画家デビューにアシスタント経験は必須! の意外な理由

必須というか、たいてい編集さんにけっこう強引にアシスタントに行かされます

でも悲観しちゃいけない。あなたが有望ってことです。

あなたと仕事をする気があるから、プロの現場にぶっ込んで実戦レベルに仕上げようとしているのです。

こんにちは。プロ漫画家歴13年、現在は会社員のネコム(@necom_anarchy)です。

投資のつもりで、いろんな漫画家さんから吸収しよう!

作画の修行というより、「人を使う」知識と経験を得るため

正直なところ、好きこのんで「ほかの漫画家さんのアシスタントに行きたい」って人はいないと思います。

わたしもそうでした。というかむしろ、背景がうまく描けないのを、

「プロになったら、背景はアシスタントさんに全部おまかせして、自分は人物だけ描くんだも~ん」くらいのことを夢見ていました。

でもですね、いざ連載が始まったら、アシスタントには行けないわけです。

連載前に、自分がアシスタントを使う」にはどうしたらいいか、体感しておく必要があります。

お礼(日当)の相場がいくらか、1日に何時間くらいお願いすべきか、食事はどうするのか、経理上はどういう扱いなのか。

これら、編集部では教えてくれません。編集さんはイマイチわかっていないのです。

漫画家の先輩のもとで、実地で肌で学んでくる必要があります。

もし将来、アシ関係でわからないことがあっても、自分がアシに行った先生になら、気軽に(とはいかないまでも)相談することができます

アシスタント経験は作画の修行というより、人事の知識と経験を得るためなのです。

こわがらずに、編集におすすめされたら素直に行ってみましょう。

ま、こわいけど。お気持ちはわかるけど。

潜入取材をして、データを集めるつもりで

修羅場中の仕事場は、編集者といえども入り込めない秘境です。そこに入れるのは、自分でも漫画が描ける選ばれた者のみ。

潜入取材のつもりで、その場の空気を味わってきてください。

ほんとにいろんなタイプの漫画家さんがいるんで、ミーハー気分でたのしんだらいいです。

漫画家志望なら、漫画を描くこと自体はたのしいわけですしね。

自分がファンの漫画家さんに行かなくてもいいんです。漫画家さん自身も、そこまで求めてません。

ご自分の知名度とかは把握してらっしゃるので、むしろ卑屈なかたが多いくらいです。

熱狂的なファンにアシスタントに来られても、たぶんちょっと困るのです。

(最低限の礼儀として、その作家さんの描いた単行本は2~3冊、読んでおかれると気まずくならないと思います。連載中の作品も、最新号くらいは読んどこう

何件か行くと、漫画家さんに共通するところ、人によって違う部分が見えてきます。

共通する部分が、いわゆる「相場」です。

=「マンガ業界における、アシスタント労働の一般的な待遇」です。

漫画制作の現場で共通すること(=アシスタント相場)

私の場合、共通した項目は、以下の感じです。

・作業は1日12時間(食事時間込み) ※食事代は漫画家側が負担

・残業の可能性がある場合は事前に申告。日給を時間割にした時給分はもらえる

・食事は一般的な時間。昼は12時。夜は7時。食べている時間のみ手を止めてOK

・日給は簡単なトーン仕上げで8000円、背景作画ができれば1万3~5000円程度

これは10年やそこら経ってもあまり変わらないかな?

ちなみに私が行ったのはアナログとデジタル半々くらい。漫画家デビュー前に行ったのはじつは2~3日くらいで、あとは連載の途切れた期間に、飛び飛びで。

最後の連載が終わって仕事がなくなってきてからは、わりとみっちり1年くらいアシのみで生活していました。これがキツくて、廃業しました。

漫画家アシスタントは、お金の面ではキツイです

12時間労働なので、毎日行けるわけではないのですよね。3日続けて行くと、あいだ1日くらいお休みがなくてはツライ。洗濯もできやしない。

専業アシスタントさんとして背景も描けるなら別ですけど、自分の場合は単発が多く、初回の現場が多かったので、トーン仕上げが主でした。

「これから漫画家になりたい!」という人なら、長期の現場でもやとってもらえるし、経験もふえれば背景作画もだんだんと教えてもらえると思います。

(実際のところわたしも、「これから背景やってもらおうと思ってたのに!」とおっしゃっていただけたタイミングで、心が折れて廃業したのでした)

なので、はじめのうちはとくに、お金がたまる仕事ではないと思います。

そういうのは、会社員かバイトで。アシスタントを始める前に。

↓漫画家のお金(生活費)の話はこちらにも書きました↓

【原稿料】漫画家の収入。月24ページ描けばギリ暮らせる!【印税】「漫画家として食う」ためには、いったい月にいくら稼げばいいのでしょうか。 つまり、月に何ページの連載がとれれば、専業で食っていける...

漫画家さんによって違うこと

アシスタントに行った先で、漫画家さんによって違うことは、その漫画家さんが独自で努力なさっている部分や、創作上の工夫です。

ぜひいろいろ観察して、自分のものにしちゃいましょう。

とくにデビュー前から専属で行く感じだと、本当に内弟子って感じで目をかけていただけることと思います。

アシスタントさんの技術が高くなることが、ひいては漫画家さんの作業効率化にもなっているわけでして。

「もっと上手くなりたい、早くなりたい」的な相談は、たいていみなさん全力で力になってくださいます。

ちなみに自分はクリップスタジオ(旧コミックスタジオ)などデジタル作画の知識は、アシスタント先でイチから教えていただきました

会社員になってからもその技術がメインで仕事しております。

当時アナログ作画しか経験がなく、デジタルに耐えうるPCが買えるほど余裕はなかったため、アシ先の先生の経済力と先読み力で最新機器に触れられてラッキーでした。

以下、それ以外で漫画家の先生によってちがっていて、ためになったこと。

・写真をデジタル加工したものを下描きにし、手書きで背景を描く方法

・デジタルで、空に浮かぶ雲を地球のパースを考えつつ表現するコツ

・仕事のPCにはキーボードカバーをする(破損防止)

・話題のマンガは、どんなものでもまず1巻だけは読む

・旅行中も原稿は持っていく。下書き→ペン入れ中だと荷物が少ない

漫画家アシスタント。やめづらいのでは?

アシ先の漫画家さんの連載が、何十年も続いたら?

基本、漫画家さんもおなじ境遇だったわけで、アシスタントがデビューする、もしくは受賞作を描くのに専念するために辞める、というのは喜んで受け入れてくれます。

自分の踏ん切りがつくかですよね。

アシスタントとして働きながら投稿作を描く。体力的にも金銭的にもキツイ。

デビューできない期間がズルズルと続いたら……?

自分がアシスタントに行った先でも、「漫画家になるのは諦めた、でもまだアシスタントに来ている」という状態の人が何人かいました。

わたしが通っているあいだに辞めて、「兼業でバイトしに行っている工場のほうに、ちゃんと就職する」という人も。

長期的にアシスタントに入る場合、少なくとも「自分もこうなりたい」という漫画家さんのところに行くべきです。

気づかないうちに画風も作風もうつります。

そして、やはり長期間いっしょに過ごす相手というのは、自分の人生に決定的な影響を与える存在になりえます。

社会復帰も頭のかたすみに入れておく

やはり、期限を決めるのは大事かと思います。

一般的な企業に会社員として就職するのに、区切りとなる年齢があります。

35歳と、40歳。

自分はいま会社員として勤めていて、面接もする側です。社内の雰囲気として、ひしひし感じます。

業界未経験なら、35歳までじゃないとキビシイです。

新入社員の教育係になる社員が、だいたい20代~30代だからです。

また、40歳を過ぎると「いちばん気力・体力がノッてる時期にうちに来ないで、あとは能力が衰えてくだけジャン?」みたいな扱いです。

何かのスキル・実績があってなら、40歳まででもイケますが、40歳を過ぎて転職をする、という行為自体が、不審がられます

45歳だとたとえば部長クラスな見た目で、ふつうに前の会社に勤務していれば偉そうにしていられた立場だろうに、

わざわざ会社やめて「チャレンジがしたくて!」と言われても、信じられますか?

ヘッドハントされたならいざ知らず。(そういう人、じっさい面接に来ました)

漫画家デビューを見すえたアシスタント業は、32歳まで!

これは漫画家としてデビューする場合にも当てはまりまして、

たとえばひと昔前は(今でも?)「25歳までに漫画家デビューできなかったら、諦めろ」みたいなことが言われていましたよね。

読者や編集者が、「おっ、この新人、これから活躍してくれそう」という期待が持てない年齢では、

デビューさせても先がないな、と編集者には思われてしまうのです。

ひとりの人生がかかっていることなので、売れる確信がないと、編集者もおいそれと中年をデビューさせられないのです。

そんなこともふまえ、わたしが勝手に決めちゃいますが、アシスタントは32歳をひと区切りとしてはどうでしょう?

デビューできるにせよ、諦めるにせよ。

集中してたたみかけろ!

アシスタントをしている期間は技術は勝手に磨かれるので、妄想ノートやネタ帳を書きためておく。

辞めると決めた期間の数ヶ月前にネームとして形にして、漫画家さんに見て意見をもらう。

一撃必殺です。直せと言われたら何度でも直す

イケそうなら、漫画家さんが編集者を紹介してくれます。

(ネームのまま通ることはないでしょうが、「ペン入れして清書して漫画賞に出してみれば」くらいは言われるでしょう。受賞するかは別問題ですが)

漫画家さんの反応が「ぜんぜんダメっぽそう」なら、アシスタントやめて、またひとりで考えましょう。

創作物ってほんと受け手によるので、見てもらう先を変えるのはマジ重要です。

のちの大ヒットする作品を、有名な編集部が持ち込みの時点でボツにしていた、という話、けっこうありますよね?

わたしも文章創作の学校に行っていましたが、担当の先生(小説家)からの反応がまったくなくて、「才能なかったのか……」と落ちこんでいたら、

副担当の先生(小説家&歌人)からはいきなり大絶賛され、おどろいた経験があります。

わかってくれる人に、見てもらいましょう。

漫画家志望なら、アシスタントやって損はない

でも変な人もいるので気をつけてください

そんな感じで、自分で人生の主導権をにぎる覚悟さえ持ち続けていれば、漫画家志望者がアシスタントになることは、メリットしかないと思われます。

ただ、時にはちょっとアレな漫画家さんもいないではないので、お気をつけください。

見分ける方法としては、「漫画家募集サイトにずっと何ヶ月も、あるいはこまめにアシスタント募集をしている人」というのは、つまり、

アシスタントさんが定着していないということで、漫画家さんになんらかの問題がある可能性があります。

(地方なのでなかなか見つからない、というケースもあり)

マンガ描いてるような人なら、作品からある程度、描いてる人の人格はなんとなく読みとることはできるでしょうが。

くれぐれも「有名漫画家さんだから安心♪」とか、思わないでくださいね。

編集部も、売れっ子だからつい見てみぬふりを……、みたなこともありますのでね。

アシスタント先の漫画家さんの、知り合いの漫画家になろう

「えっ、あの有名マンガ家さんが、あの別の有名マンガ家さんの、もとアシスタントさん!?」

っておどろくこと、あると思います。

アシスタントをした身からすれば、お手伝いした漫画家さんは、いつまでも「師匠」みたいな存在。

でも、手伝ってもらった漫画家さんからすれば、自分のアシスタントさんが、自分とおなじ漫画家になった

というのは、とても嬉しいことと思います。

なによりのご恩返しではないかと。

そんな素敵な感じになれるように、漫画家デビュー、ふんばってくださいませね!

ちなみにわたしも、「このブログ読んでましたー、漫画家になりました!」とか言ってもらえる日を、夢見てこんな長文を書いております!!

たまに完全徹夜してます! 漫画家でもないのに! ないのに!! (笑)

そんなわけでまとめ

・漫画家アシスタントの経験は、技術が上がるばかりではなく、自分がアシスタントを使う立場になったときのためにも必要

・売れてる漫画家さんの資金力と情報力を自分も味わわせてもらえる

・細かい漫画家生活の知恵みたいなのも実体験できる

以上です!!

ヒットメーカー、ジャンプ連載漫画家・樹崎聖による超実践的な漫画指南書。