プロ漫画家になるには

これからの漫画家はフル・デジタル? アナログで悪い!?

廃業する直前の2013年ごろ、単発で10人くらいの漫画家さんのアシスタントをしました。ジャンルはさまざまです。

こんにちは。漫画家を13年経験し、現在は会社員のネコム(@necom_anarchy)です。

↓当時の経験から、アシスタントに行く際の注意点をまとめた記事はこちら↓

【現実】漫画家アシスタントへ行くときの注意点【実体験】漫画家になる前にアシスタントを経験しておいたほうがよい、と前回の記事でふれました。 https://nucconu.com/ass...
↓アシスタントへ行く意外なメリットはこちら↓

漫画家デビューにアシスタント経験は必須! の意外な理由必須というか、たいてい編集さんにけっこう強引にアシスタントに行かされます。 でも悲観しちゃいけない。あなたが有望ってことです。 ...

そのうちデジタルを使っていなかったのは、デビュー2年めの少女漫画家さんと、デビュー3~5年めくらいの大人の男性向け作家さん、お2人ですね。

経験の長い作家さんほど、デジタル導入しているみたいです。

逆にいうと、デビューしたての方は、あまりデジタル化はしていないようでした。

その中でいちばん有名で売れてた少女漫画家の先生は、アシスタントが同時に5人作業に入れる仕事場で、つまりアシ用のPCが5台あり、また先生用のPCもありました。

現在2018年、5年ほど経って、もちょっと漫画家のデジタル人口はあがったのかもしれませんね。

漫画家志望で、デジタルぜんぜん使えないって人も安心していいですよ

まずはアナログで描けてないと、漫画として成立しないです

イラストならともかく、「漫画」をデジタルで描くのって、コマ割りなどを考えると相当にむつかしいです。

なので、デビュー前後にデジタルが使えなくても、あまり気にすることはないです。

デジタルできれいなイラスト描いてる人をみると、なんかラクそうだし早そうだし、あせっちゃう気持ちもわかりますが。

見開きのページなどを確認する場合、PC画面で見ると拡大・縮小などしながらなので感覚があまりつかめません。

ストーリーを追って確認する必要がある「漫画」は、とくにネームなどはやはり手描きで、視線を動かせば画像が大きなままザッと見渡せるアナログが最強です。

またイラストの場合は左右対称な構図で描くことも多いですが、漫画では動きやスピード感をあらわす絵がメインになってくるので、たとえば顔の右半分と左半分がコピペで済む、なんてケースは少ないです。

背景トーンを貼り込むのにも、パースの目が必要

デジタルの魅力としては、「手描きで背景が描けなくても、手軽に背景入の絵ができそう」という点があげられます。(わたしもそう思ってました)

「街並みのなど画像データを人物の背後に貼り込めば、面倒な背景描写をしなくても簡単に街に溶け込むキャラクターが描ける」と思いがちですが、これは間違いです。

じっさいにやってみるとわかりますが、「できあがっている背景データ」を、自分が描きたい絵に落とし込むのはけっこう制限が多く

たとえば「背景の地平線部分をコマの中に入れたい、しかも手前に人物を入れたい」などの場合に、「もうちょっと下からの角度で撮影した写真でないと、描きたい人物の角度と矛盾する」→「人物だけが浮いたへんな絵になる」ことになったりします。

3Dを使って角度を合わせるにしても、実地で背景が自然に描けるほどの目がないと、なかなか時間がかかってうまくいきません。

デジタルを使ったからといって、背景が描けない人が背景を描けるようにはならない、というのが、恥ずかしながら、わたしの結論です。

とはいえ、漫画家として起動にのってきたらデジタル化は必要

圧倒的に時短になるし、人も資材も少なくてすみます

長期的に事業として漫画家をやりつづけることができそうな目算がたったら、デジタル化はやはり導入したいところです。

下描きやペン入れの時点からフル・デジタルでやっている作家さんはやはりまだ少なくて、わたしがアシに行った先生10名様の中でもお1人、プラスもうお1人が途中から導入しだした感じです。

いずれも液タブを使ってらっしゃいました。(タブレットに直接描く方式。PC画面を見ながら、手元のペンタブに描く方式ではない)

見る場所と描く場所が離れているペンタブ方式は、慣れるまで時間がかかるので、連載を持っていてそうそう練習の絵を描いている場合ではないプロ漫画家さんの場合、ハードルが高いかもです。

とはいえ液タブは2018年現在、小さいサイズで機能が少ないものでも5万くらい、プロユースとなると10万代、平気で20万30万なんて商品もありますので、

のちのちペーパーレスで作業したい場合は、プロじゃないうちからイラストなどでいっぱい練習して、ペンタブが使えるようになれるのならそれがコスパ最強かもです。

デジタル化で最大のメリットは「トーン代がいらない」こと

あと「貼る手間」が大幅にカットできるのと、なんど貼り直しても原稿がやぶけない、的なところですかね。

トーンは連載で使っていると種類もたくさんいるし、管理というか、しまっておく場所も書類ケースのタワーが場合によっては複数個いりますね。

また、原稿が上がったあとは、貼りちらかしたシートをまとめて整理しておかなければなりません。

使いかけの、おなじ線数%の中途半端なシートが何枚もたまっていったりしましてね。細かいカケラもなかなかもったいなくて捨てられなかったりして。高いですからねトーン。

なので、フル・デジタルまではいかなくていいとしても、

最低限「アナログで下描き&ペン入れまでやって、スキャナで取り込む」→「トーンはデジタルで」くらいの割合を目指したいものです。

アナログしか知らない漫画家が、しれっとデジタルに移行してゆく方法

スマホでもレイヤーありの画像ソフトが使える

デジタルで絵を描くさいに重要なのが「レイヤーの考え方」です。

レイヤーは「重ね着」などファッション用語でも使われるように、線画や色が描かれいている透明のシートを何枚も重ねることで、絵ができあがるといった形式のことです。

これを理解していないと、線画に色を塗ろうとしても、どうしても線を色で塗りつぶしてしまったり、

また慣れていないと、まちがってつけた描き損じの点が、どのレイヤーについたのかわからずにいつまでも消せない、みたいなことになります。

プロ用ののクリエイターズPCを買う前に、レイヤーの考え方に慣れておくとすんなり移行できるかと思います。

以下、デバイスごとにレイヤーに慣れるためのソフトをご紹介します。

スマホ:ibisPaint(アイビスペイント)、MediBang Paint(メディバンペイント)

スマホアプリ「ibisPaint」(アイビスペイント)、「MediBang Paint」(メディバンペイント)などで、レイヤー機能を使った絵が描けます。

PCの描画ソフトとくらべるとちょっと工程が多いですが、パース定規など、PCソフトに引けをとらないほどの機能が無料でつかえます。

アイビスのほうはTwitterの公式アカウントに動画がけっこう載っているので、なんとなく見ていると使い方がわかるかと。レベル高い絵がいっぱいなので、「こんなの描けるんだ!?」ってモチベーションも高まります。

画面に指で、液タブみたいに直接、描き込みができます。指だと接触の範囲がひろすぎてうまく描けないので、拡大して描くといい感じかと。

また、「スマホで細い線が描ける用のタッチペン」的なものも売っています。1.45ミリもありますが、1.2ミリがいまのところいちばん極細かな。3000円程度だし、本気でスマホでがっつり絵を描くなら、買って損はないかと。

線画をアナログで描いて、スマホで撮影し写真として取り込んだデータに、色を塗ることもできます。

イチから説明を読んでいくと挫折しそうですが、描きたい絵ありきで知りたいところだけ検索して、手を動かしながらつかってゆくと覚えが早いのでは。

このアプリでレイヤー2~3枚くらいの簡単なイラストを練習していくと、かなりレイヤー作業に慣れていけると思います。

個人的にスマホでのみ使うのならアイビスが使いやすいと思いますが、メディバンはPCでも使えるので、PCでも使用を考えているのであればメディバンで慣れておくのもいいかもです。

無料なので、どっちもダウンロードして、どちらが自分に合うのかいろいろ描いてためしてみてください。

 

タブレットPC:SAI(サイ)、GIMP(ギンプ/ジンプ)、

ペイントツールSAI(サイ)、GIMP(ギンプ/ジンプ)、ともに無料のお絵かきツールです。

タブレットPCともなれば有料のソフトも使えるのでありますが、スピード感をもってゴリゴリ使えるのはやはりデスクトップPCでだと思いますので、タブレットではまず無料ソフトで慣れておくべきかと。

ちなみにスマホの欄でご紹介したメディバンもタブレット用がありますので、そちらに慣れていればメディバンでもいいかもっすね。

タブレットでもゴリゴリ熱中して多作したい、といった感じなら有料ソフトも有意義なんじゃないでしょうか。

有料ソフトを本格的に使う段階になると、レイヤーもいっぱい使うので容量も食います。ので、タブレットだと個人的にはあまりおすすめではないです。

ちなみにわたくし、仕事ではデスクトップPCでGIMPを愛用しております。ブログのアイキャッチ画像をつくるときなどに手軽かつ充分かと。

ノートパソコン(ラップトップ):CLIP STUDIO(クリップスタジオ)

漫画制作に圧倒的なシェアをほこるCLIP STUDIO(クリップスタジオ)。

ノートパソコンをお持ちなら、こちらをちょっと触っておいてみて損はないです。

イラスト制作用のクリスタ「PRO」と、がっつり数十ページの漫画制作用のクリスタ「EX」があります。いずれも体験版が30日間無料、月額使用は500円/月。

ダウンロード版(買い切り)が「PRO」は5,000円、「EX」は23,000円。

いずれ漫画作品をデジタルでするつもりなら、「EX」はのちのち必要になってきます。ただ、ノートPCだとデータ量的に荷が重いので、まずは体験版でイラストなどを描いて慣れてみるのがいいかと。

クリスタ「EX」のいいところは、漫画を32ページ描いたとして、全ページをまとめて見ることができるところです。見開き単位にもできます。

話の流れや、冒頭から末尾にかけてのベタのバランスなんかも見て調整することができます。これ超便利っす。

ノパソではカラーイラストなどは描けても、ページ数のある漫画原稿には向いてないかと存じます。

クリスタを「試してみる」以外は、タブレットと同様にSAI、GIMP、メディバンなどを主力で使うのが無難かと思います。

(無理にページ数のあるものを扱おうとすると、ものすごく遅くなったりします)

デスクトップPC:CLIP STUDIO(クリップスタジオ)有料版

デスクトップ型で、それなりのスペックのPCがあるなら、クリスタの有料版を導入しても大丈夫な環境かと思われます。

PCとネット環境とクリスタがあれば、極端に言えばネット越しにアシスタント作業だって請け負えます。

(じっさいには何度かリアルでアシスタントに出向いてからのがいいかと思いますが)

ちなみに漫画家の原稿は、印刷することを前提につくるので、データ量がバカ重くなります。クリエイター用の、容量の大きなPCじゃないと、(お父さんのおさがりとかじゃ)使いものにならないってケースがあります。

ネットでだけ発表するなら72dpiでぜんぜんいいんですが、印刷するとなると最低限、350dpiはないと、線がデジデジしてしまいます。

一般的な漫画家さんは、600dpiくらいで原稿をつくっている方が多いです。絵にこだわる作家さんは、1200dpiでつくっている方も割といます。(このあたりになると、肉眼では区別できないレベルですが)

データは、とうぜんかなり重いです。

漫画家アシとかをして、アナログ→デジタル化は独学じゃなくどんどん教えてもらおう

初心者から育ててくれる作家さんもたまにいます

アシスタント募集のサイトなどを見ていると、半年に1度くらい「まったくの初心者でも、デジタル作業をイチから教えます」という漫画家さんがおられます。

わたしもそういうところにアシスタントに行って、ペンタブのペンを持ったこともない状態で、教えてもらいました。

はじめはまったく遅くて、選択範囲を囲むペンすら、プルプルしていました。

でもまあ実戦しているとけっこう早く慣れるもので、飛び飛びで複数の作家さんのところに行っていたら、トータル3年くらいで、かなり早くなりました。

教えてくださった作家さんにも、たぶん戦力的にご恩返しができたかもしれない、そうであったらいいな、と思います。

PCの描画ソフトって、説明を読めばわかるんだけれども文章がものすごく長がったり、バージョン違いで説明と画面構成がちがってたりすると、挫折しがちです。

なのでまったくの初心者は、アシスタント先でやさしい先生に実戦でならうか、いっそスクール行っちゃったほうが身になると感じます。

また、のちのち自分でアシスタントさんをお願いしてデジタル作業をするつもりなら、PCのセットアップなども自分でできないとなりません。引っ越しや、原稿修羅場中のPCトラブルのたびに、人を呼んでいられません。

日常的にアシ先の漫画家さんがどういう作業をしているか、トラブった際は、PCを増設した場合はどんな感じか、観察できるのもとても参考になります。

ある武器で闘え! やることはたくさんある

そんな感じで、自分がいまある環境のなかで、デジタルに慣れてみる方法についてご紹介しました。

無理してデジタル機器を買ったって、使わなければムダなわけです。

「できる範囲でやる」でOKです。そうでないと、ふりまわされます。

何よりも大切な「漫画を描く時間」が、うばわれます。そうすると本末転倒です。

編集者に「そろそろデジタル化してくださいよー。ほかの作家さんみんなフル・デジタルですよー」とか責められても、余裕がないのに無理しちゃだめです。

デジタルでよけいに時間かかる人(凝り性)もいますからね。

いい感じでデジタルとアナログ、つかいわけてたのしんでください。

では!