漫画家のなり方

漫画家志望者のころに読みたかった! 『ヘタッピマンガ研究所R(リターンズ)』―もと漫画家による感想文

『ヘタッピマンガ研究所R(リターンズ)』村田雄介

以前に紹介した1885年刊『鳥山明のヘタッピマンガ研究所 あなたも 漫画家になれる!かもしれないの巻』(さくまあきら氏との共著)の、26年の時をへた続編です。2011年刊。 

『アイシールド21』『ワンパンマン』の作画担当・村田雄介氏による、マンガ形式の「マンガの描き方」ハウツー本。 

鳥山版は小学生の読者にもたのしめる内容でしたが、今回の村田版は年少の読者はガッツリ切り捨て、かなり具体的に「現役でジャンプの新人賞に応募している」デビューに限りなく近い漫画家志望者むけに描かれています。 

技術も「線をキレイに見せるために線のアウトラインをホワイトでととのえる」というマニアックなものから、キャラづくりや「漫画家としての生き方」のような、抽象的な精神論までつっこんでふれています。 

正直これ、賞にはひっかかるがいまひとつデビューするところまではいかない……、という時期に読めたなら、すっごく参考になるであろう本です。 

かく言うわたしは青年誌メインで13年ほど漫画家として生活し、経済的に破綻し現在は会社員をしておりますネコム(@necom_anarchy)ともうします。 

一般的な「マンガの描き方」よりかなりツッコんだ本

アナログの道具紹介や、老若男女の顔の描きわけ、修正の方法など、マンガの描き方ハウツーらしい通りいっぺんの説明のほか、それぞれもうちょっとツッコんだ説明がなされてます。 

たとえば、道具の紹介のところでは「ボールペンで描いちゃダメなの?」という疑問に対して、「印刷で線がかすれるからNG」として、つけペンとボールペンの線のかすれかたを拡大画像で描写してあります。 

例外として、キレイな円を描くときに使う「テンプレート」は、村田先生はボールペンで描いている、などという具体的な情報も。 

一般論としてどうかということより、こういう個人的で実際的なテクニックが本で得られるって、じつはすごいことですよね。 

ジャンプならでは! 充実のゲスト陣

村田先生だけではなく、村田先生がほかのジャンプ作家さんのところに取材に行ったりもします。 

以前の記事『鳥山明のヘタッピマンガ研究所』は宝の山! ―もと漫画家による感想文でも書きましたが、これですよ! これを求めていたのです。 

可愛い女の子を描く師範として超・適任としか言いようがない、河下水希先生(『いちご100%』『りりむキッス』)。 

キャラクターの魅力を問答無用で体現する、「しまぶー」こと島袋光年先生(『世紀末リーダー伝たけし!』『トリコ』)。 

ときおり飲み会のエピソードとともにチラチラ出現する怪異、松井優征先生(『暗殺教室』『魔人探偵脳噛ネウロ』)。 

そして現代日本でネーム(話作り)の最高峰といわれる、冨樫義博先生(『HUNTER×HUNTER』『幽☆遊☆白書』)。 

「ジャンプにこれから載る漫画家を育てたい」という編集部側の意図とおなじくらい、「漫画家志望者が知りたいこと」にこたえる、読者側の欲求にもよりそった内容といえます。 

また、大御所の漫画家だけではなく新人漫画家さん2人も登場します。いろんな角度から、マンガ制作の現場・空気感を知ることができます。 

村田先生の持ち込みのエピソードなどもあり、投稿者から新人、新人から連載作家へ、という流れもかなりリアルにイメージできる。 

鳥山版のように読者投稿の添削はないのですが、代わりに読者からの質問コーナーもあり、こちらも地味に参考に実用的です。 

前作をリスペクトし「ヘタッピ」を冠した思いがうかがえる本

発売時に漫画家をめざしている年代にとっては、26年前の1885年刊『鳥山明のヘタッピマンガ研究所』を知らない人のほうが多いでしょう。 

それでも、前作をリスペクトし「ヘタッピ」を単行本タイトルにかかげたことに、編集部の「もっともっといい漫画家志望者むけの本を出すぞ」との熱い思いが感じられます。 

これがKindle版432円で買えるわけで、マンガを描く人なら買っておいて損はないです。 

最後に、疑問なんだけど

あんなに本編で「キャラクターは目の表情がだいじ!」といっておいて、表紙の村田先生がメガネで目が隠れて見えないのはなんでだろ。 

これは「村田先生」であって村田先生ではなく、読んでいる「あなた」でもあるんだよ、的な意味だろうか。 

マンガ本の表紙って、やっぱりこちらに目線を送っているキャラクターを描くのが基本セオリーだろ? 自分だったらそうするけどなぁ……。 

とか、いろいろ考えまして、でもそうやって自分で考えさせることも本のねらいなのか!? 

売上げだけがよければいいという種類の本でもないでしょうしねぇ。 

そんな感じで。心の聖典入りしました。

『ヘタッピマンガ研究所R(リターンズ)』村田雄介