プロ漫画家になるには

漫画家になるには――ストーリーづくりに威力を発揮する魔本

マンガのストーリー力を向上させるコツが書かれた本。

といったら、中島梓の『小説道場』1~4巻、が圧倒的におすすめです。

こんにちは。漫画家歴13年、会社員5年めのネコム(@necom_anarchy)です。

物語創作の基礎素養を身につけるのに異様に有能な本

読破したころにはストーリーとは「何か」がわかる

私は漫画家時代は「絵がヘタ」「そのかわりストーリーがいい」と言われていて、「原作者にならないか?」とのスカウトも何度か受けています。

また、大学の卒論で書いた小説が、大学の機関紙(とはいえ、本屋さんで普通に売っている本)に掲載されたことがあります。

それもこれも、高校生のころにこの本(のもとになった連載)を読みあさっていたおかげだと断言できます。

ストーリー力をつけるためには、どう訓練したらいいのでしょうか?

いろんな映画や本、舞台を見て、分析し、自分でも書いていく。

もちろんそれが基本ですが、そのほかにTIPS、コツのようなもの。

「こういう視点を持ってみたらいいよ」「世界観がグッと定まるよ」という知恵が、細かくちりばめられています。

本能的に文章力がある人が無意識にやっている細かな工夫を、言葉にして説明してくれています。

もともとは投稿小説ストーリーへの批評

もちろんマンガにも通じるエッセンスが多数

もともとは1980年代に、雑誌『JUNE』に投稿された小説に対する”批評”として掲載されていた文章です。

確固とした連載というわけではなく、当初は雑誌自体の構成がかなりあいまいで、たぶんページ数も決まってなかったのではかいかと記憶しています。

それがやはり、希代の多作な流行作家・栗本薫でもある中島梓氏の文章の奔流が、もうほんと。回を追うごとに流れて止まらない。

雑誌『JUNE』とは……BL雑誌の開祖

1978年10月に、当初はサン出版から『COMIC JUN』として創刊した雑誌です。

増刊も多数出していましたが、現在は休刊。

当時の『JUNE』は、まあBL雑誌といえばそうなのだが、BLがまだぜんぜん一般的ではなかった時代なので、もちょっと存在がドラスティックだった。

「これ!」って定番がない、といいますか。

今にして分析すれば、「女性だからこうだ、と押しつけられて、苦しくて心が歪みながらもようようとあげた悲鳴」といった感じだ。

女性だから、男性が2倍で一粒で倍おいしいヒューヒュー。というノリではなく、

「女だから好かれるんじゃなくて、私が女じゃなくても男でも虫でもなんでも人間性を好きって言ってほしい。人格を認めて!」って感じの叫びの作品が多かったように思う。

作品を読んでないのに想像で書評を読む

投稿作品だからみんな技術は低くて、雑誌に掲載されるほどではない。

そんな作品を、「もっと良質のこのジャンルの作品がいっぱい読みたい!」という情熱をもって、中島梓氏がていねいにやさしく、時にはネチッこく批評していった。

批評される投稿作品は当の雑誌に掲載されてないので、読者のみんなは読んでないんだけど、さすが中島梓だけあって、その状態でも、ちゃんと面白い。

(もちろん具体的に批評する部分は引用してあるんだけど)

投稿作品という具体例をもとに、中島梓の小説作法が炸裂する。

ストーリーは人間性、読者をつつむ世界観

その創作世界に存在したい、ということ

手もとに本がないので、記憶でいくつか、のちの創作でためになったことをピックアップします。

連載作品の場合、それぞれの話の冒頭に、はじめて読む人用の扉をつける

テレビドラマなどで「これまでのあらすじ」というのを入れますが、それと同じように前回までの内容をさりげなく、小説でも入れろということです。

登場人物の回想などを利用し、「前回いちばん印象的だったシーン」を冒頭に置いて読者の興味をひくテクニックのこと。(だと解釈しています)

個人的に「扉をつける」って表現にシビれます。

オノマトペを無闇につかわない(小説の場合)

ガンガン、とかドンドン、とかの擬音語を、小説の地の文には使わないほうがいいらしいです。話しことばっぽいというか、主観的になりすぎるからかな?

逆に、これは私の意見ですが、

携帯小説やマンガの描き文字、カジュアルな広告文なんかにはガシガシ(←)つかったほうがリズム感も出るし、親しみやすいと思います。

カメラワークを意識し、ムダな描写をしない

前提として、昔なので写真のフィルムが24枚撮りとか36枚撮りとか限られた枚数しか取れなかった時代の表現です。

「新婚旅行の写真を撮るとして、フィルムが24枚しかないのにホテルでの朝食の皿の写真をドアップで撮るかね」

というようなことをおっしゃってました。

ページ数に対する描写の優先順位についての感覚を持ちなさい、と理解しました。

いらない描写はいらない。

逆に、「脇役で悪役のキャラクターがなぜそのような行動をとったか」などについては、なるべく数行でもいいから描写するように、と書かれてました。

なるほどです。それ、読みたいです。

ジャンプ漫画とかで描かれてると絶対、泣いちゃうトコですね。

ババアとか言わない

投稿作品の主人公の少年が、人を「ババア」と呼ばわりしたことに関して苦言を呈していました。

「〇〇(中島梓=栗本薫氏の小説の主人公)は少なくとも、人をババアなんて呼ばない」

現代からするとちょっとニュアンスが伝わりにくいと思いますが……。

本書が書かれた時代背景として、お笑いのダウンタウンが東京の番組に進出し、

それまでテレビであまり聞かなかったような攻撃的なツッコミが、一般人の間でも当たり前のことのように言われる&聞かれるようになってきた世相がありました。

おそらくそんなノリで書かれた投稿作品に、中島氏が抵抗を覚えたのだと思います。

作品に登場するキャラクターは、その創作世界で一緒にいたいと読者に思われるような存在でなくてはならない。

悪役も、悪役になるに足る理由がなくてはならない。

創作世界はどこまでも快、愛のある世界。

でないと読者をそこに連れてくるに足らない

みたいな意味だったんじゃないかと思います。

作家としての視点がビッシリ定まる

ストーリー作法だけじゃなく

そんなわけで、ストーリーをつくるために、効果的にととのえるために、細部のTIPSを語っているうちに、

作家はどうあるべきか、ストーリー世界に作家はどんな責任を負うべきか。をいつのまにか語ってしまっているスペクタクルな本。

男性が読んでも充分、読みやすいと思います。

上の記述は私の主観が多分に入っていると思うので、ぜひ原文で!

投稿小説の詳細もふくめて、実際にお読みください。

これ系の本って、現実に会った人にオススメされる機会、ほぼないですよ!

ネットだからこその、本心からのおすすめです。

ぜひに。

数多くのベストセラーで知られる栗本薫が、中島梓の別名で投稿原稿を批評・添削しながら、執筆の指導を行う実戦的小説入門書。