「漫画賞に投稿したら編集者に『絵柄が古い』と言われた。流行りの絵柄ってどんな感じ? 最新の絵柄にいつでもアップデートしておくには、話題作を見まくるしかないのかな?」と悩んでおられる方への記事です。
こんにちは。プロ漫画家として13年生活しまして、経済的に破綻して現在は会社員をしておりますネコム(@necom_anarchy)です。
絵柄が古い=自分の絵柄ができてない

たとえばワンピース、ドラゴンボール、JOJOなどは、20年以上前に連載開始したけれども、けして「絵柄が古い」とは感じないと思います。
というか特殊な絵柄すぎて、似た絵柄で描くと確実に「影響を受けすぎている」と言われ、オリジナル作品を描く場合にはデビューのさまたげになる可能性のほうが高い。
手塚治虫先生の絵も、絵柄が古いとは感じない。「手塚治虫先生の絵だ」って思う。
田中圭一先生がパロディして描いてはじめて、「ん、なんか古風な絵柄だな」ってなる。
つまり、いったん流行った作家さんの絵を(意識的にも無意識的にも)真似して描いている場合「絵が古い」という印象になるのだと思います。
絵のもとになったサンプルコードが「ほかの誰かの漫画」をもとにしている場合=「どっかで見たことある」になる。
絵柄が古いと言われないためには、写真や実物から模写→自分の絵柄に落とし込む
たとえば【極端な例】ですが、「パフスリーブの女性の手を描きたい」となった場合。
わたしの頭の中には↓のような絵がまず浮かびます。昔、少女漫画で見た同様のシーンのイメージです。

これを、ストーリーの都合上、↓の写真のようなポーズで描く必要があった場合。

脳内だけで描こうとすると、こんな↓絵ができあがります。

これが、「古い絵柄」と言われる仕組みです。
これを実際に写真を見て模写すると、↓のような感じの絵になります。

これだと特徴はないですが、「古い絵柄」ともとくに感じられないのではないでしょうか。
つまり、脳内データだけで漫画の絵を完成させようとすると、どうしても過去に見た絵柄に引きずられてしまう。
これを避けるには、それこそ流行の絵柄を追いまくって模写するか(自分もプロとしてデビューしているのなら、相当ハードなことだと思います)、
またはなるべくマメに実物や写真の模写をして、他人の絵柄で見た記憶があるものを、「実物を見て自分が描いた絵柄」に翻訳して、入れ替えておく。
相当数の写生をする必要があり、とても困難なことではあります。が、「自分の絵柄を確立する」とまではいかないまでも、
「手クセで描かないで、なるべく実物を見て描く」ことで、「絵柄の古くささ」はかなり軽減されることでしょう。
※ちなみに服は襟や袖の形にもかなり流行があるので、描く前に現代っぽいものを雑誌などで確認しておくに越したことはありません。
最初は既存の漫画の模写でいいが、プロを目指すなら自分の世界観を

「漫画を描きたい」と思うきっかけって、やっぱり好きな漫画の模写だと思います。
最初はそれでいいし、むしろ好きな漫画をまるまる模写して、好きな作家さんの絵柄でなんでも描けるようになったほうがいい。
島本和彦先生先生も言っていたとおり、「まるパクリしても、下手な人がやると完全には似ないので、結果オリジナリティが出てしまう」みたいな。
ただ、他人の絵柄で描くのが上手な人ほど、「この人のオリジナリティは何だ!?」って、読み手はもどかしい気持ちになるのだと思います。
その人のナマの姿が見えてこない。
「絵柄が古い」と言われているということは「オリジナリティがない」「ありきたり」と言われていることと同義です。
「古い」ことがいけないのではなく、それを飛び越えた自分の個性が、絵だけではなくストーリーにも表現しきれていないケースが多い。
流行は追わなくていい。ただ、自分に向かいあい、ナマの自分をむき出しにすることが、「古くささ」打開に魔力的に効力を発揮すると思います。
(流行の絵柄を追いまくったところで、数年後にはまた古くなってしまうことですし、根本解決にはならない)
「漫画の『絵柄が古い』=自分の絵柄がない」まとめ

・「絵柄が古い」と言われたら、脳内の思い込みで描くのではなく、実物を見て描くようにすると解決。
・「流行」は追わなくていい。自分の世界をじっくり観察し、そだてる。
・「自分の絵柄が確立」できたら、何十年たっても「古い」とは言われない。
以上です。
とはいえ、デビューして連載を持ったら絵はあるていど速さが必要になってきます。
矛盾するようですが同時に「漫画は1ページ6時間以内に描かないと食えません」もよければご参照ください。
では!