プロ漫画家になるには

漫画家になるため出版社への持ち込みは有利?【体験レポ】

漫画家になるためには、出版社への持ち込みを積極的にしたほうがいい、と言われています。が、本当でしょうか?

個人的には、持ち込みをするのは経験としていいことだけれども、デビューするために必須ではないなぁ、と感じています。

というか、向いているタイプ向いていないタイプがあるように思います。

こんにちは。プロ漫画家を13年経験し、現在は会社員のネコム(@necom_anarchy)です。

漫画家になるために、出版社への持ち込みは必須か?

行きたくないなら行かなくていいですよ

漫画家としてデビューするためのキモは、以下のことだと考えます。

1)いろんなタイプの作品をたくさん描いて、

2)できるだけ多くの編集者に読んでもらうこと。

みなさんやっぱり、どんなヒット作でも「自分には合わないなぁ」「フツーに面白んだろうけど、ピンとこない。好きじゃない」って作品、ありますよね?

編集者も万能ではなくて、やはり好き嫌いフィルターがあります。

なので、1人の編集者にイマイチな反応をされてもめげる必要はなく、別の人に見てもらうことの大切さは、↓以下の記事でもふれました↓

漫画家デビューにアシスタント経験は必須! の意外な理由必須というか、たいてい編集さんにけっこう強引にアシスタントに行かされます。 でも悲観しちゃいけない。あなたが有望ってことです。 ...

出版社への持ち込みが有利にはたらくタイプ

出版社への持ち込みが有利にはたらくのは、たとえば以下のようなタイプです。

1)社交的。初対面の編集者さんでも友達みたいに話せる自信がある。

2)絵が上手いほうだ。

説明していきます。

 

1)社交的。初対面の編集さんでも友達みたいに話せる自信がある。

これは、学生のうちだとイメージするのがむつかしいかもしれませんが、社会に出て営業職などやっている方だと、感じがわかると思います。

その場のノリで相手を巻き込んでしまえるトークのテクニックがあるなら、自分の漫画の評価とは別に、その場だけでも編集さんと仲良くなってしまう

(で、あるかのようなノリに持っていく)

持ち込みをしているあいだに、業界内のぶっちゃけ話のひとつも聞けたらしめたものです。

編集さんも人づきあいが必須の、ノリが大切な業種なので、こちらからうまくフランクな感じを出すと、合わせてくれる場合もあります。

カットでもなんでも描きますよ!」「家が近いので、描いたらすぐ駆けつけます!」的な感じで、関係をつなげられたらこっちのものです。

なにがなんでも絵で(出版業界で)仕事をしたい人には、これが近道かと。

漫画ジャンルでは一般的ではありませんが(知られていないだけかも)、ライター業などだと「頭を下げてスキマ仕事をとる!」のは、業界にねじ込むごくふつうの仕事術です。

 

2)絵が上手いほうだ。

編集者は、自分では「絵は描けないが、物語を考える力はある」との自負があります。

いろんな漫画家さんのストーリーにダメ出ししたり、別のエピソードを提案したりしているので、もっともなことです。

編集者から漫画原作者になった方も大勢いらっしゃいますね。

なので、「自分が教育して、自分の好きなストーリーを描かせることができそう」な、絵の上手い新人は、編集者は囲い込みたくなります。

とりあえず、「人物をどの角度から描いても違和感がない」ほどの画力があれば、持ち込みではむげな対応はされないでしょう。

ストーリーがダメだとしても、「見込みがある」といってもらえる可能性が高いです。

とくに物語にこだわりがなく、絵の上手さには自信がある! というタイプには持ち込み、向いていると思います。

基本、コミュ障が行くもんじゃないです。

「出版社への持ち込み、気が重いけど、デビューのためには行ったほうがいいのかなぁ~。でも、こわいなぁ」とためらっている、そこのあなた。

あなたみたいなタイプは持ち込み、向いていません。行かなくてもいいです。

持ち込みに行かなくても、デビューできる人はできます。

描いた漫画編集者の好み合致したとき、向こうからお願いされます

なんでわざわざ凹むために交通費と時間を使って行くことがあるでしょうか。

持ち込みとは、基本的に出版社側にメリットのあるシステムです。

出版社へ漫画の持ち込みに行くデメリット

最初に電話に出た編集者1人の独断と偏見(アドリブ)

たいていの場合、編集部に漫画を持ち込みに行く際は、「前日までに電話で予約をしてください」と雑誌に書いてあります。

で、電話をするわけですが、多くの場合、電話に出た編集さんが、当日の持ち込みも対応してくれます(スケジュールが合わないとかがなければ)。

たいてい電話に出るのって、新人の編集者さんが多いです。

新人だからって悪いわけではないですが、持ち込みって多くの場合、当日は1人の編集者さんにしか見てもらえませんよね。

しかも、編集者さんがその場で読んで、その場で感想をくれる。

プロの編集者とはいえ、新人のアドリブの意見なわけです。

時間的な関係で、読んでもらうのは通して1~2回、がせいぜいです。

それなら、投稿して編集部の全員にじっくり読んでもらい、ボツになるにしても、時間がたってから読み直してもらうチャンスがあったほうがよくないですか?

(応募作品が多い場合は、全員の編集者が読むわけではないかもしれませんが、少なくともだれかが「これおすすめ!」といった作品は、全員に読まれます)

編集者が漫画好きとは限らない

じっさいにわたしが担当してもらった編集者さん、「仕事以外で漫画は読まない」と公言してるんですよ。

でも、彼の担当した漫画はけっこうな数、ヒットしている。

彼の仕事としてのセンスなのか、担当が彼でなくてもヒットする作品だったのか、それとも作品と時代が超マッチして、たまたまか。

いずれにせよ、仕事として成立しているなら、会社としてそれはそれでいいんでしょうけど、漫画家として最初の作品を、そういう人に批評してもらいたいと思いますか?

わたしはいやです。そんな人が最初の1人に当たったら困る。

そんな人の言う批評を真に受けて、凹むのなんてゴメンです。

漫画の持ち込みに行き凹む → 復活するまで時間がかかる

そう。凹むんです。

大絶賛で「いますぐ連載を!!」と言われない限り、投稿者はみな凹みますよね。

自分の内臓さらして、本気で魂けずって描いてたらなおさらです。

場合によっては、それから描けなくなってしまうことも……。

自分が「傷つきやすい」と自覚のある人は、持ち込み、しないほうがいいかもしれません。

そんなことより、いっぱいたのしく無邪気に、漫画を描くほうがいいです。

他人に受け入れられよう、と考えはじめると、病みます。

たのしかったことがたのしくなくなります。好きじゃなくなります。

わたしも、なりました。プロ漫画家や漫画家志望者は、みな多かれ少なかれ、この病にかかっているかもしれません。

【体験レポ】1社に1回、もう1社に2回ほど行きました

ほぼ見込みナシな反応。でもよそでデビューできました

憧れの編集部を見れる、という意味ではいいのかも。

とはいえ、最近は編集部のあるフロアまでは通さず、1階の応接スペースで持ち込みの対応をする出版社が多い印象。

青林堂『ガロ』編集部(※今はない)

電話で予約をとったのだが、忘れられたみたいで、バイトのおねえさんしかいなかった。

おねえさんが原稿のコピーをとってくれて、「編集長が帰ってきたら見せます。有望だったらあとで連絡が行くと思います」とのことでした。

連絡はなかった。

まあ、中学生のときから読んでいた憧れの雑誌の編集室が見れて、よかった。

イメージとは違っていて、おしゃれでキレイだったけれども。

(わたしが読んでいた時期の「材木屋の2階」にある編集部ではなく、渋谷に引っ越したばかりの新しい事務所だった)

某少女漫画編集部(今もあるので伏せる)に2回ほど

2度とも、「もちょっと絵が上手だといいですね。どんどん描いて練習してください」的な反応。

若い編集者が担当。ちょっとこちらをバカにした感じ。イライラした感じ。

無理もない。いそがしいさなか、「使えなさそう」な志望者の相手をしなきゃいけないのだ。傷つけないよう最新の注意を払いながら。

こんな扱いがいやだったので、あまり人には持ち込みをすすめないんですよね。

まあ、「見返してやる」みたいに思えるならいいんじゃないですか。

このような接し方をされたので、この雑誌には載りたくないなぁ。と思いました。

投稿で受賞した青年誌(今もあるので伏せる)

かなしい話ばかりでもなんなので。

んで持ち込みがそんな感じでも、やっぱり漫画家にはどうしてもなりたかったので、投稿はし続けていました。

数年後、青年誌の賞にひっかかる。

そこの編集部での扱いは、持ち込みのときとは天と地の差です。

持ち込みしていたときは、極端に言ってしまえば「使えないゴミ」扱い、受賞してからは「今後、漫画家として活躍してくれるかもしれない存在」なわけで。

受賞からデビュー当初は、チヤホヤしてもらったと思います。

1回デビューして連載を持つと、いろんな人の目にふれるので、ほかの雑誌の編集者さんからも声をかけてもらえます。

「余裕があったら、うちの雑誌にも読み切り描いてもらえませんか?」みたいに。

んでまあ、時がすぎ、単行本が売れなくなったりすると、次第に扱いが冷たくなってゆくわけなんですけど。しょうがないっすね。これは。

それでも、出版社へ漫画の持ち込みに行ってみよう!

漫画家の行動は、すべて漫画のネタになるんじゃよ

上のようなデメリットを承知のうえで、編集部に漫画を持ち込みに行くのは、じつは賛成です。どんどん行ったらいいよ!

なぜなら漫画を描く人間の行動は、すべて漫画のネタになるわけでして、将来「漫画家志望者が出てくる漫画」を描こうと思ったら、もう参考になることこのうえなし。

漫画の持ち込みって、漫画を描きあげた人しか経験できませんしね。

そういう限られた人にしかできない経験は、ぜひ貪欲にしてみるべきです。

正面切って人から自分の漫画をダメ出しされた経験があれば、もし漫画家になって、アシスタントさんの漫画にアドバイスすることがあっても、

ムダに傷つけるようなことは少なくてすむのでは。

などと、思います。

まとめ

・絵が上手い人と社交的な人は、持ち込みに向いてる

・傷つきやすい人は持ち込みには行かなくて大丈夫

・いろんな漫画をたくさん描いて、多くの編集者に見てもらおう

・経験としてなら、漫画の持ち込みはいいと思う

以上です!!

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