【原稿料】漫画家の収入。月24ページ描けばギリ暮らせる!【印税】
「漫画家として食う」ためには、いったい月にいくら稼げばいいのでしょうか。
つまり、月に何ページの連載がとれれば、専業で食っていけるのでしょうか?
こんにちは。プロ漫画家を13年経験しまして、経済的に破綻し、現在は会社員のネコム(@necom_anarchy)です。
「東京近郊に住む、ひとり暮らしの新人漫画家」との設定で、試算してみました。
……が、いきなりキビシイ数字が出ちゃいました。
「漫画家として食う」ためには、 月24ページ描けばギリ暮らせる!」
毎月24ページって、ひとりで背景からトーン仕上げまで描ききれるかな?
微妙なところですね。
新人漫画家が東京近郊ひとり暮らしする場合 ⇒ 手取り月16万は必要
新人漫画家の原稿料は3,000円~8,000円
新人漫画家の原稿料は、一般的に今も8,000円くらいだと思います。
ちなみにこれは、私がデビューした1999年の青年誌でのお値段で、
当時から、アシスタント先の先生などに「”20年前と変わらぬお値段“だねw」
と失笑されていました。
先生がデビューされた1980年代も、新人の原稿料は8,000円スタートだったそうです。
業界全体として、新人漫画家の原稿料は上がらない見通し
漫画業界は、ずっと前から不況というか、業界としては“下り坂”です。
私のデビューした頃は「ゲームやインターネットに読者が奪われる」と言われていました。
今は「スマホやソシャゲや違法アップロードサイトに読者が奪われる」という感じかと思われます。
新人漫画家の原稿料は、残念ながら、下がりこそすれ、
これから上がる流れはおそらく、ないと思っておいたほうがよいでしょう。
業界としてもあがいているところなのでしょうが。(と信じたい)
雑誌・ジャンルによる漫画家の原稿料の違い
多くのジャンル・雑誌では新人漫画家の原稿料は8,000円前後だと聞いています。
私がデビューしてからほかの雑誌にうつる際もそんな感じのようでした。
ただ、某少女漫画雑誌は、デビュー作はページ3,000円、
アンケートで人気がとれて第2作めが掲載されることになったら、
その作品からはページ6,000円。というシステムだと聞いたことがあります。
一般的に少女漫画雑誌は原稿料は安めな傾向にあります。
(描き込みが少なくてもOK、1作品のページ数が多め、単行本になりやすい)
反対に、えってぃなジャンルは気持ち高め、という話も聞いたことがあります。
(描き込みは濃厚でないとダメ、長期連載が成立しない)
読者投稿を漫画化する実話ジャンルやネットコミック、ティーンズラブものなどは
ページ5,000円だったというケースも聞いたことがあります。
(アシスタント先の知人から)
原稿料からは源泉徴収が引かれていますよ!
ちなみに漫画家の原稿料からも大抵、源泉徴収が10.21%引かれています。
翌年の3月に確定申告をして、余分に徴収された分を還付してもらう必要があります。
その年に稼いだ原稿料が、経費を差し引いて48万円以内ならば申告義務はないのですが、それ以上ならばお金が戻ってくる確率が高いのでもったいなので確定申告はしましょう。
※住民税を多く計算されてしまう可能性もあるので、48万円以内であっても確定申告はするのがおすすめです。
インボイス制度などもからみ、税制は年々様相を変えてくる見通しです。
基本的な税金の知識がまったくない場合、『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください! (SANCTUARY BOOKS)』などを読んでおくといいかもです。
漫画を月24ページ描けば、手取りは17万くらい。
多くの場合、原稿料は編集さんとの口約束で「いくら」と言われることが多いのではないでしょうか。
出版社と漫画家の関係は、現在のところ残念ながらかなり「あいまい」です。
契約書を交わすのは単行本化と、インターネット販売の場合くらいです。
インボイス制度はまだこれから変化する可能性もあるのでひとまず置いておいて、原稿料は源泉徴収の10.21%が引かれている金額が手取りと考えて仮に計算してみます。
ということで、手取り月16万を得るには、
[8000円×24ページ=19万2000円(月の原稿料)]ー[源泉徴収10.21%]=17万397円
が必要、ということになります。
※23ページでも16万超えになるのですが、漫画作品としては24ページ単位が一般的なので。
とはいえ手取り月17万というのも東京近郊では本当にかなりギリギリの額です。長期的な目で見れば理想は22万くらい欲しいところです。個人の感覚ですが。
めんどくさい……親元で漫画家をすればいいのでは?
親元で漫画家生活ができるなら、そのほうがいい。
ごもっともで、それが許される環境なら、そうしたほうがいいです。
ただ田舎で実家ぐらしな場合、日中マンガを描いて引きこもっている人間が親戚、近所からどう言われるのか。
自分が言われるだけじゃなく、親も言われる。親はそれに耐えられるのか。
また、若いうちはいいけれど、結婚適齢期になったら。
30代になったら、40代になったら。
周囲の言うことを気にしないで、ずっとマンガを描いていられますか?
というのをクリアできれば、実家で暮らしていたほうがいいかと思われます。
いまどきネット環境もありますしね。
とはいえ、ひとり暮らししたほうが描ける世界の幅が広がるって面もあると思います。
光熱費や家賃を確保して予算を管理する感覚。排水溝を自分で掃除する経験。セールスに自分で対処するときのスタンスのとり方。得られることは多いです。
ようは大人の視点でものが描けるようになります。
そのへんが自分のマンガと関係ないと感じるのならば、切り捨ててもいいかもですが。
新人漫画家に「東京近郊でひとり暮らし」を推す理由
新人漫画家は出版社に「呼ばれれば出向ける」距離に住むべし
とくに新人のうちは、急にページ数があいて穴埋めを求められる場合などに、
出版社にすぐに直接、出向ける距離に住んでいたほうが絶対に有利です。
編集者がピンチのときに直接、顔を見て依頼し、原稿ができたらすぐ届けられる。
また、ちょっとしたページ数のエッセイ漫画や、新人賞募集のイラストなど、
誰に頼んでもさほど変わらない仕事は、わざわざメールや電話で依頼するよりも、実際に会って打ち合わせをする「ついで」に頼みやすいです。
新人のうちはとくに、編集者と直接、会う回数を増やすことが断然、有利です。
小さな仕事もどんどん受けて、読者さんに覚えてもらいましょう!
漫画家の住居:具体的には中央・総武線沿線がオススメ!
出版社にすぐ行けるところに住んだほうがいい、とはいえ、都心は家賃が高いです。
ちょっと郊外に住んだほうがいいと思います。
出版社は東京都・千代田区のJR中央・総武線「水道橋」駅に集中しています。
「中央・総武線」というのは、西東京から都心への路線が「中央線」、
千葉から都心への路線が「総武線」というのですが、相互に乗り入れしており、
中央線(西東京)――中央・総武線(都心)――総武線(千葉)
という感じになっています。
中央線沿線(西東京方面)より、総武線沿線(千葉方面)のほうが、家賃は安めです。
また、新宿が起点となる小田急線、京王線沿線なども便利です。
私は漫画家時代は、編集さんにすすめられて総武線の千葉寄り「小岩」駅に住んでいました。
編集さんでご家庭のあるある方は、沿線で千葉の「船橋」あたりに住んでいる方が多いようです。通りすがりに原稿が受け取れるので作家が「小岩」付近に住んでいると便利だとか。
『僕だけがいない街』で漫画家志望の主人公が住んでいたあたりでして、
アニメに出てきていた喫茶店で、私もよく編集さんと打ち合わせしていました。
ほかに漫画家さんかなり住んでいたっぽいです。
(プライバシーの問題があるので、編集さんは教えてくれませんでしたが)
原稿料として月に16万以上の収入が必要な理由[うちわけ]
家賃:管理費込みで5.5万円までを目安に!
前述のように東京近郊にアパートの部屋を借りるとして、
毎月の家賃が、管理費等込みで男性なら4~4.5万円、女性なら5~5.5万円。
このくらいを目安に考えてみてください。
女性が1万高いのは、やはり防犯面のことがあるからです。
いくらジャイアンの妹・ジャイ子(ペンネーム:クリスチーヌ剛田)激似のマンガっ娘であっても、「女ならなんでもいー」勢ってけっこう大勢います。
実家を離れて誰も知らない土地で暮らすのは、本当、気をつけてください。
固定支出:光熱費、通信費など
で、この家賃に食費・光熱費を足していきます。
食費は、ほぼ自炊する時間はないと思うので、ちょっと多めに月4万円。
電気代1万+ガス代5000円+水道5000円+通信費2万=4万円
※電気代は夏場のエアコン使用 & 丸一日PC使いっぱを想定。
※※水道代は自治体によってかなり料金が違う。高めで試算してます。
これだけで12.5万~13.5万になりましたがさらに、雑費が入ります。
意識から飛びがちですが、石鹸、トイレットペーパー、洗剤、掃除用具などの日用品。
薬代。医療費。保険料。
服に無頓着であっても半年に1度、下着や靴下は買い換えるとして、それ代。
とても大事なインプット代。本代、映像作品代、アプリ代、交際費、画材(素材)費。
ちなみに2023年7月現在、アマゾンがaudible(オーディブル)という、「本を読み上げたものを音声で聞ける」サービスの3か月無料キャンペーンをしてます。
こういうのは貪欲に使ってインプットをふやしてくべきかと。
(月額1500円で聴き放題。いつでも退会できる)
定期的な大きな支出
それに賃貸物件だと、東京圏だと2年に一度、契約更新があります。
その際にかかるのがアパートの更新料。だいたい家賃1か月分を徴収されます。
2年に1度5.5万円かかる=月2,300円かかる。
小さい金額のようですが、これをきちんと使わないで貯めておけるか、は大きい。
あらかじめ払うと決まってるものならまだよくて、突発的な支出もさまざまあります。
たとえば、冠婚葬祭。自分の兄弟が結婚した場合、いくらコミュ障でもなかなか
逃れられません。お祝い金3~5万円(世代によって違う)、スーツ代、交通費。
思いもかけない事故、病気になった場合の医療費。歯の治療。地方税。
あと、急に冷蔵庫が壊れた。洗濯機が動かない。とかもあります。
勤め人はボーナスがありますけど、フリーランスにはないですから……。
これらを考えると、月に最低でも1万円以上は貯金したい。
原稿料のほかに、最初に「半年暮らせる分の貯金」を用意しておくべき
漫画家が東京近郊の一人暮らしで、半年暮らせる貯金は約100万! (16万×6ヵ月=96万)
このような心配をとっぱらうため、有効な手段は「あらかじめお金をためておく」です。
お勤めで、あるいはバイトでガーッとお金をためてから、漫画に集中する。
これなら急場でお金が必要になったときも、自分が想定していない支出があっても、
なんとか生き延びていける確率があがります。
でも、働きたくないでござる
私はデビューが25歳でして、2年の仮面浪人中&大学在学中にバイトをして300万貯め、
大学3年までにできる限りの単位をとり、4年時のまる1年を漫画投稿にあてました。
それでもデビューできず会社員になり、でもやっぱりあきらめきれずにまた投稿、
入社して半年くらいで、雑誌の漫画賞に入賞しました。
働きたくないでござる、という目的で「漫画家になりたい」と願った部分も
多分にあったのですが、それに反して働きたくない願いを叶えるために、
めっちゃ働く♥結果になっていました。
でもいいんです、働くのもつらいことばかりじゃない。
PCの扱い方とか、その仕事先で学びましたし。飲食店のバックヤードの様子も知れた。
「イヤなヤツ」の実例もいっぱい見た(笑)
計画的に戦略的に! 印税が出るまで!!
辛気くさい話ばかりして申し訳ありません。
私自身がお金のことをあまり深く考えておらず、知らないこと、無頓着なことが多く、
生活が行き詰まり失敗したので、ついたくさん書いてしまいました。
これから漫画家になるかたはこのような失敗をせず、しっかり”事業計画“! を立てて
目標に邁進してくださいまし。
「半年暮らせる分の貯金」が尽きるまでに、
仕事の効率がグングンあがって、お仕事を増やせますように!
大ヒットして原稿依頼が殺到し、プロアシさんが何人も雇えるようになりますように!
コミックスがすぐに出て、それも重版出来で印税ガッポガッポなりますように!
お祈りしております。